- 工務店サイト13,046件を実測して分かった、AI検索に「拾われる入口」の現状
- 多くの会社に足りないのは、特別な技術ではなく「事例の具体性」と「よくある質問」
- Google公式・論文・外部調査で分かっていること/まだ分かっていないこと
- 費用をかけずに今日から始められる5つの手と、やらなくていいこと
「ChatGPTに『〇〇市でおすすめの工務店は?』と聞く人が増えている」という話を、工務店の経営者の方から聞く機会が増えました。実際、毎日生成AIを使う人に限ると、住宅購入の情報収集で生成AIを使った人は約8割という調査もあります(株式会社Mico、2025年11月、有効回答326件。毎日AIを使う層に絞った調査なので、住宅検討者全体の数字ではありません)。
では、AIに探される側の工務店サイトは、いまどんな状態なのか。関東5県・長野・滋賀の工務店・リフォーム・外壁塗装などの事業者サイト13,046件を、同じ物差しで実測しました(2026年10月)。
先に結論|AI検索対策に、魔法はありません
- 入口で閉じているサイトは、ごくわずか。AIの巡回をrobots.txtで拒否しているのは1.7%、サイト全体を検索から外しているのは1.4%でした。
- 差がつくのは「中身」。事例ページがあっても、築年数・面積・期間・工事内容などの数字がきちんと入っているのは、事例ページのあるサイトの29%にとどまりました。
- よくある質問(FAQ)を載せているのは29%、代表者の言葉を載せているのは20%。多くの会社がまだ手を付けていないので、足すと目立ちます。
- ただし「これをやればAIに紹介される」と言い切れる根拠は、まだありません。
AI検索は「特別な対策」が必要なのか
分かっていることを、確認できたものに絞って整理します。
| 出典 | 分かっていること |
|---|---|
| Google 検索セントラル | AI OverviewsやAI Modeに載るための追加要件や特別な最適化は不要。特別なschema.org(構造化データ)も不要。基本のSEOが土台 |
| GEO論文(arXiv) | 手法によって、生成AIの回答の中での可視性が最大40%上がったと報告。ただし効果は分野によって異なる |
| BrightLocal調査 | ChatGPTの地域ビジネス検索800件(2024年11月、米国)で、引用元の58%が事業者自身のサイト、27%が事業者の言及、15%がディレクトリ |
| Google担当者の発言 | llms.txt(AI向けの案内ファイル)は、AIがサイトを選ぶ助けにならないという趣旨 |
つまり、Googleは「特別なことは要らない」と言い、論文は「具体的に書くことの効果」を示し、地域検索の調査では「自社サイトが最大の引用元」でした。自社サイトの中身を、具体的で読みやすくすることが、いちばん確かな道筋です。
何を、どうやって調べたか
対象は、Googleマップに掲載されている工務店・注文住宅・リフォーム・外壁塗装・屋根工事の事業者のうち、公式サイトに到達できたものです。
| エリア | サイト数 | AI準備度の中央値 | 80点以上 | 事例ページあり | FAQあり |
|---|---|---|---|---|---|
| 群馬 | 1,504 | 65 | 19% | 73% | 26% |
| 埼玉 | 4,015 | 66 | 22% | 76% | 32% |
| 茨城 | 2,297 | 65 | 19% | 75% | 29% |
| 栃木 | 1,445 | 66 | 21% | 77% | 29% |
| 千葉北西部 | 1,213 | 68 | 24% | 79% | 34% |
| 長野(主要19市) | 1,397 | 66 | 22% | 80% | 25% |
| 滋賀 | 1,175 | 65 | 17% | 79% | 23% |
| 合計 | 13,046 | 66 | 21% | 77% | 29% |
エリア別の中央値は65〜68点で、地域差はほとんどありません。差があるのは、地域ではなくサイトごとです。
「AI準備度」は100点満点で、次の3つで採点しました。
- 到達(25点):AIや検索の巡回を拒否していないか、サイトマップがあるか
- 構造(25点):タイトル・見出し・構造化データなど
- 中身(50点):事例ページとその具体性、よくある質問、代表者の言葉、住所・電話のテキスト、ブログ・お知らせ
方法は、公開URLへの通常のアクセス(GET)で確認できる範囲だけです。ログインや認証突破は一切行っていません。
わかったこと
| 項目 | 該当率 | 意味 |
|---|---|---|
| サイト全体の巡回をrobots.txtで拒否 | 1.3% | 検索にもAIにも見えない。ごく少数 |
| AIの巡回(GPTBot・ClaudeBotなど)を拒否 | 1.7% | 意図せず閉じている会社は少ない |
| サイトマップがある | 76% | 約4社に1社は無い |
| 事例ページがある | 77% | 入口はある。問題は中身 |
| 事例ページが1,500字以上(事例ページのあるサイト中) | 45% | 短い紹介文だけのページが多い |
| 事例に数字が5個以上(㎡・坪・万円・等級など、事例ページのあるサイト中) | 29% | 具体的な数字が入った事例は少数派 |
| よくある質問(FAQ)がある | 29% | 多くの会社が未着手 |
| 代表者の言葉・あいさつがある | 20% | こちらも少数 |
| 住所・電話がテキストで書かれている | 62% | 画像だけのサイトは読み取られにくい |
| 構造化データ(JSON-LD)がある | 47% | うち会社情報の形式は35%。Googleは必須としていない |
点数の高さ別に、各サイトが持っているものを見ると、次のようになります。
| AI準備度 | サイト数 | 事例ページ | FAQ | 代表者の言葉 | ブログ・お知らせ | 構造化データ |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 40点未満 | 1,397 | 6% | 3% | 2% | 18% | 2% |
| 40〜59点 | 3,305 | 56% | 13% | 11% | 49% | 25% |
| 60〜79点 | 5,646 | 95% | 29% | 21% | 82% | 53% |
| 80点以上 | 2,698 | 100% | 63% | 39% | 96% | 87% |
工務店が今日からできる5つの手
特別な技術は要りません。すべて、費用をかけずに始められます。
- 事例に「数字」を入れる:築年数、延床面積、工期、工事内容、断熱などの性能値、費用の目安(言える範囲で)。「素敵な家が完成しました」より、数字と判断の理由のほうが、人にもAIにも伝わります。
- よくある質問を10個書く:実際にお客様から聞かれる質問と、大工さんの答えをそのまま。「見積りは無料?」「何か月かかる?」「補助金は使える?」など。
- 代表者・職人の言葉を載せる:なぜこの仕事をしているのか、何を大切にしているか。短くて構いません。顔写真は必須ではありません。
- 住所・電話・対応エリア・営業日をテキストで書く:画像に埋め込まず、文字で。Googleビジネスプロフィールの内容とも揃えます。
- 基本のSEOを整える:タイトルと見出しを分かりやすく、サイトマップを置き、重要な内容を画像でなくテキストで書く。構造化データは、見える内容と一致させて補助的に。
書き方の例(イメージ)
✕「築古の住宅を素敵にリフォームしました。お客様にも大変ご満足いただけました。」
○「築45年・延床32坪の木造2階建て。耐震診断で評点0.7を確認し、壁の補強と断熱改修を実施。工期は約3か月。『冬の寒さが一番の悩み』というご相談から、窓と床下の断熱を優先しました。」
※架空の例です。実際には、数字や判断の理由は、実際の工事の内容を書いてください。
やらなくていいこと
- llms.txtを置くこと:置いても害はありませんが、Googleの担当者は助けにならないと発言しています。優先度は低いです。
- キーワードを詰め込むこと:読みづらくなり、人にもAIにも不利です。
- 「AI対策で何倍になる」といった断言を信じること:効果を保証できる根拠は、今のところありません。
- AIで大量に記事を作ること:現場の判断や数字が入っていない記事は、差がつきません。
この調査の限界
- 事例ページの判定は、リンクの言葉(「施工事例」「新築」「リフォーム」など)に頼った近似です。別の名前を使っている会社を見落としたり、逆に拾いすぎたりする場合があります。
- 対象は、Googleマップに掲載され、サイトに到達できた事業者です。サイトを持たない会社や、サイトが見られない会社は含みません。
- 点数の配点は当社の設計です。点数と、実際にAIに引用されることの関係は、まだ検証できていません。
- 住宅検討者が工務店を探すのにAIをどの程度使っているかの直接の調査は、見つかっていません。
自社がAIに出るかを、自分で確かめる方法
- ChatGPT・Gemini・GoogleのAIモードに、「(地域名) 工務店 おすすめ」「(地域名) 古民家 リフォーム」など、お客様が聞きそうな言葉で聞いてみる。
- 自社が出るか、出ないか。出ている会社は、どんな情報を載せているかを見る。
- 月に1回、同じ質問で繰り返して記録する。足したこと(事例、FAQ)と見比べる。
AIから実際に人が来ているかは、GA4で見られます
AIに出たかどうかだけでなく、「AIの回答から、実際に人が来たか」も、アクセス解析(GA4)で無料で確認できます。サーチコンソールでは、AI経由の流入は通常のWeb検索に含まれ、分けて見えません(Google公式の案内)。
- GA4の「集客」→「トラフィック獲得」で、ディメンションを「セッションの参照元」に切り替え、「chatgpt」で検索する。
- 「エンゲージメント」→「ランディングページ」で、「+」から「セッションの参照元」を追加し、chatgpt.com に絞る。
- AIの回答から人が入ってきた「入口のページ」が並ぶ。
実例として、自社で支援しているアートメイクサロンのサイトでは、直近90日(2026年8月〜11月4日)のセッション1,091のうち、ChatGPT・OpenAI経由が138(約12.6%)でした。月別では9月が64、10月が63。入口はトップページのほか、男性向けの眉のページ、エリア別のページ、お悩み別のコラムなど、ページごとに分かれていました。
注意点が3つあります。①数えているのは訪問数で、予約や売上ではありません。②参照元が付かずに来た人は「ダイレクト」に混ざるため、実際はこれより多い可能性があります。③1つのサイトの例であり、工務店で同じ結果になるとは言えません。まず自社で「ゼロではないか」を確かめるところから始めるのがおすすめです。
自社サイトの状態を、無料で確認します。
事例の具体性・よくある質問・基本の設定など、AI検索に拾われるための状態を、公開情報の範囲で確認してお伝えします。結果の保証はできませんが、足りないところを一緒に整理できます。
オンライン対応・押し売りなしよくある質問(FAQ)
AIO・LLMO・GEOは何が違うのですか?
呼び方が違うだけで、施策の大半は重なっています。AI Overviews向けをAIO、ChatGPTなど言語モデル向けをLLMO、生成エンジン向けをGEOと呼ぶことが多いものの、定義は媒体によって揺れています。工務店が最初にやることは、どれでも同じです。
AI検索のために、特別なタグや設定は必要ですか?
Google公式は、AI OverviewsやAI Modeに載るために「追加の要件や特別な最適化は不要」「特別なschema.orgも不要」としています。クロールを許可し、重要な内容をテキストで書く、といった基本が土台です。
やれば、AIに紹介されるようになりますか?
保証はできません。工務店サイトで「この対策をするとAIに引用される」ことを検証したデータは、今のところ見つかっていません。足してから、実際にAIに聞いて確かめるのが確実です。
小さな工務店でもできますか?
できます。事例に築年数・面積・期間・工事内容を書く、よくある質問を10個書く、代表の言葉を載せる、といった内容は、費用をかけずに今日から始められます。
まとめ|足すのは「特別な技術」でなく「具体的な中身」
入口で閉じている工務店サイトは、ほとんどありません。差がつくのは、事例の具体性とよくある質問、そして代表者の言葉といった「中身」です。AIに紹介されることは保証できませんが、これらはお客様が会社を選ぶときにも、そのまま役に立つ内容です。まずは、最近の事例を1件、数字を入れて書き直すところから始めてみてください。