初動で大事なのは、立派な計画書より「誰が指揮を執るか」「情報をどこに集めるか」「何を優先するか」が決まっていることです。この3つが揺らぐと、人が足りなくても現場が動けます。
災害の直後は、普段できていることもできなくなります。電話はつながらず、人員は不足し、利用者の状態も把握しきれません。だからこそ、最初の1時間の動きは考えなくても動ける形にしておく必要があります。
この記事を書いた人の立場
AIdealize株式会社 代表・眞貴田 正博。元消防士(約8年・現場4年/本部4年)。大学在学中に新潟県で中越地震を経験し、東日本大震災では支援隊として大規模災害の現場に参加しました。制度の細部は施設の種別・自治体で異なるため、断定できない点は「確認先」を明記しています。
初動の3原則
- 指揮者を最初に決める:施設長が不在でも動けるよう、代行順位(第1・第2・第3)を決めておく
- 情報を一か所に集める:ホワイトボードや模造紙など、見える形で「利用者の状態」「職員の出勤」「被害状況」を集約する
- 優先順位は命→人員→設備の順:建物の片づけより先に、人の安全と人員の把握を行う
災害対応の現場では、指揮と情報の集約が曖昧だと、同じ確認を何度も繰り返したり、必要な連絡が抜けたりします。人手が少ない介護施設ほど、この2つを先に決めておく価値があります。
最初の1時間の判断表(目安)
| 時間 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 0〜5分 | 身の安全の確保、揺れ・火災の確認 | 職員自身の安全が先。火気の停止、出口の確保 |
| 5〜15分 | 利用者の安全確認、指揮者の確認 | 居室・フロアごとに担当を決め、声かけと目視で確認。状態を一覧に書く |
| 15〜30分 | 人員の把握、避難の要否判断 | 出勤者・不在者を確認。建物の損傷・火災・浸水の状況で、屋内待機か避難かを判断 |
| 30〜60分 | 連絡と記録 | 家族・協力医療機関・自治体・法人本部へ。つながらない場合の手段(代替)も試す。時系列で記録 |
夜勤や少人数の時間帯は、同じ表を「一人でも動ける形」に縮める必要があります。たとえば、確認は「まず呼吸・意識が必要な方」から、連絡は「最優先の1か所」から、という優先順位を事前に決めておきます。
つまずきやすい4つのポイント
1. 施設長が不在で、誰も判断できない
代行順位を決め、名簿に書いて見える場所に貼ります。判断してよい範囲(避難するかどうか等)も、あらかじめ文書化しておくと迷いません。
2. 家族への連絡が殺到・つながらない
個別に電話するのではなく、メール・一斉連絡ツール・掲示など、まとめて伝える手段を決めておきます。安否の「状況報告」を定期的に出すと、問い合わせも減ります。
3. 記録が後回しになる
記録は後の判断(行政への報告、家族への説明、減算・報酬の確認)に使われます。時刻・判断・指示者の3点だけでも、その場で書いておきます。
4. 避難するか留まるかで迷う
建物の被害、火災・浸水の有無、ライフラインの状態に応じた判断基準を、事前に表にしておきます。基準が曖昧なまま現場で決めようとすると、判断が遅れやすくなります。
訓練で確かめること
初動は「知っている」だけでは動けません。机上訓練で、①指揮者が不在のとき誰が代行するか、②情報をどこに集めるか、③連絡がつながらないとき何で代替するか、の3点を声に出して確認します。30分の訓練の進め方はBCP訓練の実施例で解説しています。
厚生労働省:介護施設・事業所におけるBCP作成支援研修には、入所・通所・訪問・居宅別の作成資料と机上訓練動画があります。施設の種別によって必要な項目が異なるため、自事業所に該当するものを確認してください。
FAQ
初動の判断表は誰が作りますか?
施設長・管理者が中心になり、現場の職員(夜勤を含む)と一緒に作ると実態に合います。作ったあと、必ず机上訓練で確かめます。
小規模・訪問系でも同じ考え方ですか?
訪問系は「利用者宅にいる職員」と「事務所に残る職員」で動きが違います。安否確認の優先順位や連絡手段を別に整理する必要があります。訪問介護のBCPも参考にしてください。